自分がどこまでやるべき?期待値を確認し主体的に動くフォロワーシップ
「指示されたことはできるけれど、自分で判断して進めるべき範囲が分からない」「次に何をすれば良いか分からず、指示を待ってしまう」
このように感じている若手ビジネスパーソンの方は多いかもしれません。特に社会人経験が浅い時期には、自分がどこまで考えて行動して良いのか、チームや上司から何を期待されているのかが曖昧で、不安を感じることもあるでしょう。
しかし、この「期待値」を明確にし、必要に応じて調整していくことは、指示待ちから卒業し、主体的なフォロワーシップを発揮するために非常に重要なステップです。本記事では、期待値の確認と調整を通じて、チームに貢献するための具体的な行動方法をご紹介します。
フォロワーシップと「期待値」の重要性
まず、フォロワーシップとは、リーダーを支え、チーム全体の目標達成に向けて主体的に貢献するメンバーの役割を指します。単に指示通りに動くだけでなく、自ら考えて行動し、チームに良い影響を与えることが求められます。
このフォロワーシップを発揮する上で、「期待値」の明確化は不可欠です。なぜなら、期待値が不明確だったり、自分と相手との間でズレていたりすると、以下のような問題が生じる可能性があるからです。
- 手戻りや非効率の発生: 期待される成果物と異なるものを作成してしまい、修正に時間がかかる。
- 信頼関係の低下: 納期遅延や品質不足などが発生し、頼りにされなくなる。
- モチベーションの低下: 自分が貢献できている実感を持てず、何のために仕事をしているのか分からなくなる。
- 指示待ちの習慣化: 自分で判断するリスクを避け、曖昧なまま指示を待つ姿勢が強化される。
期待値を早期に確認・調整することは、これらの問題を未然に防ぎ、自分が自信を持って主体的に動ける範囲を広げることに繋がります。
期待値を確認・明確にする具体的なステップ
では、どのように期待値を確認すれば良いのでしょうか。指示や依頼を受けた際に、次のステップで疑問を解消していくことを意識してみてください。
ステップ1:指示・依頼の背景・目的を確認する
単に「〇〇をお願いします」という指示だけでなく、「なぜそれが必要なのか」「最終的にどういう状況を目指しているのか」といった背景や目的を理解することが重要です。目的を理解することで、タスクの優先順位や、途中で発生するであろう疑問点に対する判断基準が見えてきます。
- 確認例: 「このタスクは、最終的にどのような状態にするために必要なのでしょうか?」「この情報が必要な背景を教えていただけますでしょうか?」
ステップ2:完了イメージ・成果物のレベル感を確認する
「完了」の定義や、求められる成果物の品質・形式について具体的に確認します。どの程度の完成度で、いつまでに、誰に、どのような形式で提出すれば良いかを明確にしましょう。
- 確認例: 「このタスクの完了とは、具体的にどういう状態を指しますか?」「成果物の形式や含めるべき情報はありますか?」「期日までに、どのレベルまで仕上げる必要がありますか?」
ステップ3:自分で判断して良い範囲・判断すべきでない範囲を確認する
これが特に、自分で動くことに不安を感じる若手の方にとって重要なポイントです。どこまで自分で判断して進めて良いのか、どの段階で報告・相談が必要なのかを確認します。これにより、「勝手にやって怒られたらどうしよう」という不安を軽減できます。
- 確認例: 「この部分の進め方について、いくつか選択肢があるのですが、自分で判断して進めても大丈夫でしょうか?」「もし〇〇という状況になった場合、すぐに報告・相談が必要でしょうか?」
ステップ4:疑問点や不明点をそのままにしない
上記ステップを踏まえても、まだ曖昧な点や疑問が残る場合は、必ずその場で質問して解消しましょう。「こんなことを聞いたら失礼かな」「自分で調べるべきかな」とためらわず、丁寧な言葉遣いで確認することが大切です。曖昧なまま進めることが、最もリスクが高い状態です。
- 確認例: 「お話しいただいた〇〇の部分なのですが、△△という理解で合っていますでしょうか?」「恐れ入ります、この点についてもう少し詳しく教えていただけますでしょうか?」
期待値を調整し、主体的に貢献する方法
期待値を確認するだけでなく、状況に応じて調整したり、プラスアルファの貢献を提案したりすることも主体的なフォロワーシップの一環です。
方法1:難易度が高い場合や期日厳守が難しい場合の「代替案+相談」
指示された通りに進めるのが難しいと感じた場合、ただ「できません」と伝えるのではなく、「代替案」とセットで相談しましょう。自分の状況を伝えつつ、どのような形であれば対応可能か、代替となる方法はないかなどを提案することで、建設的な解決に繋がります。
- 実践例: 「ご指示いただいた〇〇についてですが、現状のタスク状況を鑑みると、△△の期日までに対応するのが難しい状況です。つきましては、優先順位を調整し、□□を△△までにご提出し、残りの部分は▽▽までに対応させて頂く、というのはいかがでしょうか?」
方法2:追加で貢献できそうな点やリスクに気づいた場合の「+αの提案」
指示されたタスクに関連して、他に確認しておくと後工程がスムーズになる点や、潜在的なリスクに気づいた場合など、「+α」の提案を積極的に行いましょう。これは、指示待ちからの卒業を示す具体的な行動であり、チーム貢献に大きく繋がります。
- 実践例: 「ご指示いただいた〇〇について、関連する△△のデータも確認しておくと、より精度の高い分析ができるかと存じます。もしよろしければ、そちらも合わせて実施してもよろしいでしょうか?」
方法3:進捗報告とセットで「現状認識と次のアクション提案」
単に進捗状況を報告するだけでなく、「現状、ここまで完了しており、このような状況です。つきましては、次にこれを進めたいと考えておりますが、よろしいでしょうか?」というように、現状認識と次に取るべき具体的なアクション案をセットで報告・相談しましょう。これにより、ただの報告者ではなく、自ら考えて進めている主体的な姿勢を示すことができます。
- 実践例: 「〇〇のタスクですが、現在△△のフェーズまで完了しました。課題として□□が見つかっております。次のステップとして、▽▽の対応を進めようと考えておりますが、これで問題ないでしょうか?」
方法4:自分のスキルや状況を踏まえた自己評価と貢献意欲の発信
自分が持っているスキルや経験をチーム内で共有したり、現在のタスク状況から「少し余裕があるので、お手伝いできることはありますか?」などと、積極的に貢献意欲を示したりすることも、期待値調整と主体性の表れです。これにより、チームはあなたの能力を把握しやすくなり、適切な役割分担やタスク依頼に繋がりやすくなります。
- 実践例: 「私は△△に関する経験がありますので、もしその分野で何かお手伝いできることがあれば、お声がけください。」「現在の担当タスクが一段落しましたので、他に私が貢献できることはありますか?」
期待値調整を習慣化するためのヒント
これらのステップや方法を日々の業務に取り入れるためには、いくつかのヒントがあります。
- 担当者との定期的な対話を活用する: 上司との1on1や、担当者との簡単な打ち合わせの機会を捉え、積極的に疑問を解消したり、自分の考えを伝えたりしましょう。
- 「報連相」の質を高める: 報告、連絡、相談をする際に、単なる事実伝達で終わらせず、「なぜそうなったのか」「次にどうしたいか」といった自分の考察や提案を加える意識を持つことが、期待値調整や主体性発揮の土台となります。
- 曖昧さを恐れず質問する姿勢を持つ: 「分からないのは恥ずかしいことではない」という意識を持ち、曖昧な点があれば臆せず質問しましょう。その一歩が、後々の手戻りを防ぎます。
- 確認した内容や合意事項を記録する: 口頭での確認だけでなく、メールやチャットなどで内容を簡潔にまとめ、認識のズレがないかを再確認することも有効です。
- 小さなタスクから試してみる: いきなり大きなタスクで全てを実践しようとする必要はありません。まずは日々の小さなタスクで、背景を確認したり、完了イメージを質問したりすることから始めてみましょう。
まとめ
「自分がどこまでやるべきか」という疑問は、主体的に行動しようとする意欲の表れでもあります。この疑問を解消し、自信を持って業務を進めるためには、期待値の確認と調整が非常に有効な手段です。
指示や依頼の背景・目的、完了イメージ、自分で判断できる範囲などを丁寧に確認し、必要に応じて代替案やプラスアルファの提案を行うことで、期待値のズレを防ぎ、スムーズかつ質の高い業務遂行が可能になります。これは、単に指示をこなすだけでなく、チーム全体の成果に貢献する主体的なフォロワーシップの実践そのものです。
今日からぜひ、日々のコミュニケーションの中で「期待値の確認」を意識してみてください。少しずつでも行動を変えていくことで、指示待ちから卒業し、自律的にチームに貢献できるビジネスパーソンへの一歩を踏み出せるはずです。