日々の声かけでチームを支える。ポジティブな影響を与えるフォロワーシップ
「指示されたことはきちんとこなせるけれど、それ以上の行動はどうすれば良いのだろう」「チームに貢献したいけれど、具体的に何をすれば喜ばれるのか分からない」と感じることはありませんでしょうか。日々の業務を遂行する中で、このように悩む若手ビジネスパーソンの方は少なくありません。特に、チームで仕事を進める上では、個人のタスク完了だけでなく、チーム全体の状況を良くしていくための「主体的なフォロワーシップ」が重要になります。
主体的なフォロワーシップには様々な形がありますが、この記事では「日々のポジティブな働きかけ」に焦点を当てて解説します。チームメンバーへの肯定的な声かけや小さな行動が、どのようにチームの士気を高め、協力関係を深め、結果としてチーム全体の成果に繋がるのか。そして、それを今日から実践するためにはどうすれば良いのか、具体的なステップをご紹介します。
ポジティブな働きかけがチームにもたらす価値
私たちはチームの一員として業務に取り組んでいます。各自が与えられたタスクをこなすことはもちろん重要ですが、それだけではチームとしての最大の力を発揮することは難しい場合があります。チームのパフォーマンスは、メンバー間の連携や士気、そして心理的な安全性に大きく左右されるからです。
ここでフォロワーシップの視点から見てみましょう。フォロワーシップとは、リーダーを「フォロワー(支援者・追随者)」として支え、チームの目標達成に貢献する行動や考え方です。指示を待つだけでなく、自ら考えて動き、チームをより良くするために能動的に関わることが「主体的なフォロワーシップ」です。
そして、日々のポジティブな働きかけは、この主体的なフォロワーシップの実践において非常に有効な手段です。具体的には、以下のような価値をチームにもたらします。
- 心理的安全性の向上: ポジティブな声かけや感謝の表明は、チーム内に安心感を生み出します。「自分の意見を言っても大丈夫」「失敗しても責められない」という心理的な安全性が高まることで、メンバーはより自由に発言し、新しいアイデアを共有しやすくなります。
- 協力関係の強化: 互いに労いや感謝を伝え合う文化は、信頼関係を構築し、メンバー間の協力や助け合いを促進します。困っているメンバーに自然と手が差し伸べられるようになります。
- 士気の向上: メンバーが良い成果を出した際に具体的に褒めたり、困難な状況で励ましの言葉をかけたりすることは、個々のモチベーションを高めるだけでなく、チーム全体のポジティブな雰囲気を醸成し、困難に立ち向かう活力を生み出します。
- 情報共有の促進: ポジティブなコミュニケーションが多いチームでは、情報共有がより活発になります。「共有しても歓迎される」という雰囲気があるからです。これは問題の早期発見やスムーズな連携に繋がります。
これらの価値は、個人のタスク完了だけでは得られない、チームとしてより高いパフォーマンスを発揮するために不可欠な要素です。
今日から実践できる!ポジティブな影響を与える具体的なステップ
では、具体的にどのような行動を日々の業務に取り入れれば良いのでしょうか。ここでは、すぐにでも実践できる小さなステップをご紹介します。難しく考える必要はありません。まずは一つから試してみましょう。
ステップ1:感謝と労いを具体的に伝える
最も基本的で効果的なポジティブな働きかけの一つが、感謝や労いの言葉を伝えることです。「ありがとう」だけではなく、「〇〇さんの△△のおかげで、タスクが進みました。ありがとうございます」「昨日の遅い時間まで対応してくださって、お疲れ様でした」のように、具体的に何に対する感謝・労いなのかを添えると、より気持ちが伝わります。
実践例: * プルリクエストをレビューしてもらった後、「レビューありがとうございます。特に〇〇のご指摘、大変参考になりました」とメッセージを送る。 * 仕様について質問に答えてもらった際に、「分かりやすい説明、ありがとうございました。おかげで理解が進みました」と伝える。 * 会議の準備をしてくれたメンバーに、「今日の会議準備、お疲れ様でした」と声をかける。
ステップ2:小さな成功や良い行動を見つけて褒める
チームメンバーの素晴らしい行動や小さな成功を見つけて、具体的に褒めることも有効です。大きな成果だけでなく、日々の小さな努力や工夫に気づき、それを言葉にすることで、相手は「自分の行動が見てもらえている」と感じ、承認欲求が満たされます。これは、その後の主体的な行動への大きなモチベーションに繋がります。
実践例: * メンバーが書いたコードを見て、「〇〇の書き方、とても分かりやすくて勉強になります」と伝える。 * 難しい問題に取り組んでいるメンバーに、「〇〇さん、その調査、粘り強く取り組んでいて素晴らしいですね」と声をかける。 * チーム内の非効率な部分に気づき、改善提案を行ったメンバーに、「△△の提案、チームにとって非常に助かります。素晴らしい視点ですね」と伝える。
ステップ3:「何か手伝えることはありますか」と声をかける
指示待ちから卒業し、主体的にチームに貢献するためには、自分から周囲に関心を持つことが重要です。特に、メンバーが困っている様子や、タスクが滞っている状況に気づいたら、「何か手伝えることはありますか」と一声かけてみましょう。たとえすぐに手伝えなくても、その声かけ自体が「自分は一人ではない」「チームで協力できる」という安心感を与えます。
実践例: * メンバーが特定の技術で詰まっているようであれば、「その件、私も少し知見があります。何かお力になれることはありますか」と話しかける。 * 特定のタスクの進捗が遅れているように見える場合(もちろん、過度に干渉しない範囲で)、「このタスク、状況どうですか?もし詰まっているようでしたら、何かできることあるか教えてください」と優しく確認する。 * 定例会議で特定のメンバーの発言が少ない際に、後で「今日の会議で話されていませんでしたが、何か気になっていることはありますか?」と個別にフォローする。
ステプ4:前向きな意見やアイデアを共有する
会議中や日常のコミュニケーションにおいて、ネガティブな側面に目を向けるだけでなく、どうすればもっと良くなるか、どうすれば目標達成できるかといった前向きな視点から意見やアイデアを共有しましょう。たとえ採用されなくても、その姿勢自体がチームに活気をもたらし、「自分たちで状況を良くしていける」というポジティブな空気を作ります。
実践例: * 会議で課題が共有された際に、「その課題に対して、〇〇というアプローチも考えられるかもしれません」と提案する。 * 日々の業務で気づいた改善点について、「△△をこのように変えると、もっと効率が良くなるのではないでしょうか」とチームに投げかける。 * チーム目標達成に向けて、「目標の〇〇を達成するために、私は△△の面で貢献していきたいと考えています」と自分の意欲と貢献方法を共有する。
ポジティブな働きかけを習慣にするために
これらのポジティブな働きかけは、特別なスキルや知識を必要とするものではありません。日々の業務の中で少し意識を変え、実践するだけで始められます。まずは、以下のことを意識して習慣化を目指してみましょう。
- 観察: チームメンバーの様子や状況に関心を持ち、日々の業務を観察する習慣をつけます。誰がどんなことに取り組んでいるか、どんな状況にあるかを把握することで、適切なタイミングで声かけができます。
- 小さな一歩: 最初から全てを完璧に行おうとせず、「一日に一度は誰かに感謝を伝える」「週に一度はメンバーの良い行動を見つけて褒める」など、達成しやすい小さな目標を設定して取り組みます。
- 継続: 効果はすぐに目に見えるわけではないかもしれません。しかし、継続することで徐々にチーム内の雰囲気は変化していきます。諦めずに続けることが重要です。
- 自己肯定感: 自分のポジティブな働きかけが、たとえ小さくてもチームに良い影響を与えていることを自覚し、自分自身の貢献を肯定することも大切です。
まとめ
指示待ちから卒業し、主体的なフォロワーシップを発揮することは、決して難しいことばかりではありません。日々の業務の中で、チームメンバーへのポジティブな声かけや働きかけを意識することからでも始められます。
感謝や労いを伝えること、小さな成功を褒めること、困っている仲間に手を差し伸べること、そして前向きな意見を共有すること。これらの行動は、チームの心理的安全性を高め、協力関係を強化し、士気を向上させる力を持っています。そして、それらは確実にチーム全体の目標達成への貢献に繋がります。
「自分には特別なスキルがないから」と躊躇する必要はありません。あなたのポジティブな働きかけ一つ一つが、チームを支える大切な力となります。今日から、あなたの周りのチームメンバーに、温かい言葉や行動を一つ届けてみませんか。その小さな一歩が、あなた自身の成長と、チーム全体の活性化に繋がっていくはずです。