「頼まれた仕事」をチームへの貢献機会に変える主体的なフォロワーシップ
はじめに
日々の業務の中で、上司や同僚から様々な「頼まれごと」をされる機会があるかと思います。それは小さな調べものかもしれませんし、他の人が抱えているタスクの一部を手伝うことかもしれません。こうした頼まれごとに対して、「指示通りにこなすのが自分の役割だ」と考えている方もいらっしゃるかもしれません。もちろん、依頼された内容を正確に実行することは重要です。しかし、一歩進んで「頼まれた仕事」を主体的に捉え直すことで、単なるタスク消化ではなく、チームへの貢献や自身の成長に繋がる大きな機会に変えることができるのです。
この記事では、「頼まれた仕事」を指示待ちではなく、主体的なフォロワーシップを発揮する絶好の機会と捉え、どのように行動すればチームへより貢献できるのか、具体的なステップとヒントをご紹介します。
なぜ「頼まれた仕事」への主体的な対応が重要なのか
「頼まれた仕事」への主体的な対応は、以下のような点でチームやあなた自身にとって価値があります。
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チームへの貢献機会の拡大 指示以外の依頼は、チームの現在の状況や課題を反映していることが多いものです。主体的に対応することで、他のメンバーが抱える負荷を軽減したり、チーム全体の目標達成に必要なピースを補ったりと、直接的な貢献に繋がります。
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信頼関係の構築 ただ言われたことだけをやるのではなく、依頼の意図を汲み取り、期待以上の結果を出そうと努める姿勢は、周囲からの信頼を得ることに繋がります。この信頼は、より重要な仕事を任されたり、建設的な協力関係を築いたりするための基盤となります。
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自身の視野とスキルの拡大 頼まれごとは、普段自分が関わらない業務や領域に触れる機会となることがあります。主体的に取り組む過程で、新しい知識やスキルを習得したり、チーム全体の動きや他のメンバーの役割について理解を深めたりすることができます。これは、自身の市場価値を高めることにも繋がるでしょう。
「頼まれた仕事」を貢献機会に変える具体的なステップ
では、実際に頼まれごとをどのように主体的な貢献機会に変えていくのでしょうか。以下に具体的なステップと行動例をご紹介します。
ステップ1:依頼の「背景」と「目的」を理解する
依頼内容そのものだけでなく、なぜその依頼が発生したのか、その背景や最終的に何を目指しているのかを理解しようと努めます。これにより、単なる作業としてではなく、より大きな文脈の中で自分の役割を把握できます。
- 具体的な行動例:
- 依頼を受けた際に、「この情報は何に使われるのでしょうか」「この作業は、〇〇プロジェクトの△△という目標達成のために必要でしょうか」のように、依頼の背景や目的について質問し、確認する。
- もし依頼者が多忙そうであれば、後から関連する議事録やチャット履歴などを確認し、自分で背景情報を補完する。
ステップ2:期待される「アウトプット」を確認する
どのような形式で、どのレベルの品質で、いつまでに提出や報告をすれば良いのか、期待されるアウトプットのイメージを具体的に確認します。これにより、手戻りを減らし、依頼者の期待に応えるための計画を立てやすくなります。
- 具体的な行動例:
- 「〇〇のような形式(例: Excelリスト、箇条書きのメモ)でまとめればよろしいでしょうか」「この情報について、現時点で分かっていることのみで大丈夫でしょうか、それとも可能な限り詳しく調べる必要がありますか」のように、アウトプットの形式やレベル感について質問する。
- 期日についても、「〇〇日中という認識で合っていますか」「もし可能であれば〇〇日午前中までに一度ご確認いただけますでしょうか」のように、具体的なタイミングをすり合わせる。
ステップ3:必要な情報を自ら収集・整理する
依頼内容を遂行するために必要な情報は、すべてが依頼時に提供されるとは限りません。関連するドキュメントを探したり、過去の類似事例を調べたり、必要であれば他の関係者に協力を仰いだりと、主体的に情報収集を行います。
- 具体的な行動例:
- 依頼されたテーマに関連する過去の資料(議事録、仕様書、チャット履歴など)を社内ツールで検索する。
- 疑問点があれば、依頼者に確認する前に、まずは自分で検索エンジンや社内Wikiなどで調べる。
- もし他のメンバーが関連情報を持っている可能性があれば、簡潔に状況を説明し、協力を依頼する。
ステップ4:進捗を主体的に報告・相談する(報連相+α)
依頼されたら、放っておかずに適切なタイミングで進捗を報告します。「今どこまで進んでいるか」「次に何をしようとしているか」「何か問題はないか」を共有することで、依頼者は状況を把握でき、必要なサポートをしやすくなります。また、不明点や判断に迷うことがあれば、抱え込まずに早期に相談します。
- 具体的な行動例:
- 依頼に着手した際、中間報告として、「〇〇について調査を開始しました」と一度連絡を入れる。
- 作業の途中で不明点が出てきたり、想定外の事態が発生したりした場合は、「△△について確認したい点があります。〇〇時頃にお時間を頂けますでしょうか」のように、相談の時間を依頼する。
- 単なる状況報告だけでなく、「〇〇まで進みましたが、次は△△の点を確認しようと考えています」のように、今後の予定や自身の考えを加えて報告する(報連相+α)。
ステップ5:完了報告に「次の一手」や「気づき」を加える
依頼されたタスクが完了したら、単に「終わりました」と報告するだけでなく、その結果を踏まえて考えられる「次の一手」や、作業を通じて得られた「気づき」を添えて報告します。これは、依頼の目的達成に向けてさらに貢献できる可能性を探る行為であり、依頼者もその後のアクションを検討しやすくなります。
- 具体的な行動例:
- 依頼された資料作成が完了したら、「資料が完成しました。この後、この資料をもとに〇〇を進める予定でしょうか。もしよろしければ、△△の点についてもお手伝いできることがあればお声がけください」のように、次のステップや貢献意欲を示す。
- 調査を終えて報告する際に、「今回の調査で、△△という新しい情報も見つかりました。これは〇〇に役立つかもしれません」のように、依頼内容に直接関連しないものの有用な情報や気づきを共有する。
- 作業プロセスで非効率な点に気づいた場合は、「今回の作業は〇〇の点が大変でしたが、△△のように改善すると次回以降効率化できそうです」のように、業務改善の視点を加える。
注意点:キャパシティと優先順位も主体的に管理する
主体的な対応は重要ですが、すべての頼まれごとを無条件に引き受けることが常に最善とは限りません。既に多くのタスクを抱えている場合や、依頼内容が自身の能力やチームの目標と大きくかけ離れている場合は、安請け合いせず、自分の状況を正直に伝え、調整や相談を行うことも主体性の一部です。自分のキャパシティやチーム全体の優先順位を踏まえ、最も貢献できる方法を選択する判断力も養っていきましょう。
まとめ
「頼まれた仕事」は、単なる指示待ちから一歩踏み出し、主体的なフォロワーシップを発揮するための身近で実践しやすい機会です。依頼の背景・目的理解から始まり、期待値の確認、主体的な情報収集、報連相への工夫、そして完了報告に次の視点を加えるといったステップを踏むことで、単なるタスクの実行者から、チームの成果に積極的に貢献するメンバーへと変わっていくことができます。
小さな頼まれごとからで構いません。今日から一つ、ご紹介したステップの中のどれかを意識して取り組んでみてください。あなたの主体的な一歩が、チーム全体の力となり、あなた自身の確かな成長へと繋がっていくはずです。