質問は「主体性」の第一歩。業務理解を深めるフォロワーシップ実践法
指示されたタスクをこなすことはできても、「自分からどう動けば良いのか分からない」「次に何をすれば良いか指示がないと不安だ」と感じることは、特に社会人経験が浅い時期には少なくないかもしれません。チームに貢献したいという気持ちはあるものの、具体的な行動にどう繋げれば良いか迷うこともあるでしょう。
主体的に動くための第一歩は、必ずしも大規模な改善提案やリーダーシップの発揮である必要はありません。日々の業務の中で、意識一つで変えられる小さな行動から始めることが可能です。その小さな一歩として非常に有効なのが、「主体的な質問」です。
本記事では、主体的な質問がなぜ重要なのか、そしてどのように実践すれば業務理解を深め、フォロワーシップを発揮することに繋がるのかについて具体的に解説します。
なぜ「主体的な質問」が主体性・フォロワーシップに繋がるのか
指示を待つ状態から抜け出し、主体的に動くためには、まず業務の「意図」や「背景」を理解することが不可欠です。単に「何をやるか」だけでなく、「なぜそれをやるのか」「それが全体のどの部分に繋がり、どのような成果を目指すのか」を知ることで、自分のタスクが持つ意味を深く理解できます。
この「意味の理解」を能動的に進めるための強力なツールが「質問」です。しかし、ここでの質問は、単に分からないことを尋ねる受動的なものではありません。業務の目的や背景、関連情報を自分から引き出し、タスクの全体像を把握しようとする、主体的な情報収集活動としての質問です。
このような主体的な質問は、以下のような点で主体性やフォロワーシップの発揮に繋がります。
- 業務理解の深化: 指示の背景や目的を理解することで、単なる作業者ではなく、タスクの意味を理解した上で取り組めるようになります。これにより、予期せぬ状況への対応力や、より良い成果を出すための工夫が生まれやすくなります。
- 指示待ち状態の解消: 自分で必要な情報を得ることで、指示を待たずに次の行動を考えられるようになります。「この情報があれば、次はこう動けるな」といった先読みが可能になります。
- チームへの貢献: 質問を通じて得た情報は、自分だけでなくチーム全体の理解促進に役立つことがあります。また、質問することで、指示した側が伝えきれていなかった重要な点に気づくきっかけを提供することもあります。不明点を早期に解消することは、手戻り防止や効率向上にも繋がります。
- 信頼関係の構築: 業務に真剣に取り組み、理解を深めようとする姿勢は、上司やチームメンバーからの信頼を得ることにつながります。
主体的な質問を実践するためのステップ
では、具体的にどのように主体的な質問を日々の業務に取り入れれば良いのでしょうか。いくつか実践的なステップをご紹介します。
ステップ1:質問する前に「自分で調べる」を習慣にする
主体的な質問は、何も調べずにすぐに聞くことではありません。まずは自分で考え、資料を探し、関連情報を調べることから始めます。これにより、質問の精度が上がり、より本質的な疑問点を見つけ出すことができます。
- 関連ドキュメントや過去の議事録を確認する
- ツールのヘルプや公式ドキュメントを調べる
- 検索エンジンを使って情報を集める
自分で調べた上で分からなかった点を明確にすることで、「ここまで調べたのですが、この点が不明です」という具体的な質問が可能になり、相手も答えやすくなります。
ステップ2:質問内容と目的を整理する
質問する前に、自分が何を、なぜ知りたいのかを整理します。漠然と「分かりません」と伝えるのではなく、具体的な質問内容を準備します。
- 何が具体的に不明なのか: どの部分、どのステップが理解できないのかを明確にする。
- どこまで自分で試したか、調べたか: 解決のために講じた行動を示す。
- 質問することで何を得たいのか: 業務の次のステップに進むためなのか、判断に迷っているからなのか、背景を理解したいのか、目的を明確にする。
このように整理することで、相手はあなたの状況を正確に把握し、的確な情報を提供しやすくなります。
ステップ3:指示の「背景」や「意図」を尋ねてみる
指示された内容について、単に手順を聞くだけでなく、「なぜこの手順なのか」「このタスクの最終的な目的は何か」「このタスクは全体のどの部分に繋がるのか」といった背景や意図を尋ねてみます。
例えば、 「このデータ集計は、〇〇のレポート作成に使うのでしょうか。そうだとすれば、△△の項目も考慮する必要があるか教えていただけますでしょうか。」 「このツールを使う指示ですが、他のツールと比べてどのような利点があるのでしょうか。理解しておきたいです。」 といった質問は、単なる作業確認以上の情報を含み、業務への深い関心を示すことにも繋がります。
ステップ4:タスク完了後、「次に何をすべきか」を具体的に尋ねる、あるいは提案する
タスクが完了した際に、「終わりました」と報告するだけでなく、次に自分が何をすべきかを尋ねたり、自分なりの次のアクションを提案したりします。
例えば、 「〇〇のタスクが完了しました。次に着手すべきタスクはございますでしょうか。」(まず確認する) さらに一歩進めて、 「〇〇のタスクが完了しました。次に着手すべきタスクについてですが、関連する△△の作業を進めるのはいかがでしょうか。理由としては…(と提案する)。」 このように、自分から次に繋がる行動に関心を持つ姿勢を示すことで、指示を待つ時間を減らし、主体的に業務を進める機会を増やせます。
ステップ5:質問のタイミングと伝え方を工夫する
質問するタイミングや方法は、相手の状況を考慮することが大切です。忙しいタイミングを避けたり、口頭だけでなくチャットやメールで事前に要点を伝えておいたりするなどの工夫が、円滑なコミュニケーションに繋がります。
また、質問する際は、「お忙しいところ恐縮ですが」「〇〇についてお伺いしてもよろしいでしょうか」といった配慮のある言葉遣いを心がけましょう。
主体的な質問がもたらす効果とフォロワーシップへの繋がり
主体的な質問を習慣にすることで、自身の業務遂行能力が向上するだけでなく、チーム全体にも良い影響をもたらします。
- 誤解の減少と手戻り防止: 不明点を早期に解消することで、間違ったまま作業を進めるリスクを減らせます。
- チーム内の知識共有促進: 質問とその回答がチーム内で共有されることで、他のメンバーの疑問解消にも繋がる場合があります。
- チームの課題発見: 質問を通じて、指示や情報伝達の曖昧さなど、チーム内の潜在的な課題が顕在化することもあります。
これらの効果は、まさにフォロワーシップの実践に他なりません。主体的に情報を取りに行き、自身の業務遂行能力を高め、チーム全体の円滑な連携や効率向上に貢献する。これは、リーダーを補佐し、チームを成功に導くフォロワーの重要な役割です。
まとめ
指示待ちからの卒業は、大きな変化から始める必要はありません。日々の業務の中で「質問」という身近な行動に、主体性を取り入れることから始められます。
「なぜそうするのだろう」「これをやると次にどうなるのだろう」といった少し踏み込んだ視点を持ち、それを解消するための主体的な質問を実践してみてください。自分で情報を取得し、業務の全体像や意図を理解しようと努める姿勢が、あなたの主体的な行動の幅を広げ、チームにとって頼れる存在へと成長させてくれるはずです。
質問は恥ずかしいことではなく、主体的に業務に関わることの意思表示です。小さな質問から、あなたのフォロワーシップを育んでいきましょう。