「周りを見る」ことから始める!チームを支える主体的なフォロワーシップ
主体的な働き方を身につけたいと考えている若手ビジネスパーソンの皆様、そして特にITエンジニアの皆様へ。
日々の業務で、与えられた指示を正確にこなすことは、プロフェッショナルとして非常に重要です。しかし、それだけで十分だと感じられない、次に何をすれば良いか分からない、チームにどう貢献できているか実感が薄い、といった課題を感じることもあるかもしれません。
指示を待つだけでなく、自ら考えて行動する主体性を発揮するための一歩として、「周りをよく見る」という視点から始めるチームへの主体的な関わり方について考えていきます。これは、フォロワーシップの実践において非常に基本的な、そして効果的なアプローチです。
なぜ「周りをよく見る」ことが主体性につながるのか
主体性とは、自らの意思に基づき行動することです。職場で主体性を発揮すると聞くと、大きな改善提案をしたり、新しいプロジェクトを立ち上げたりといった高度な行動をイメージするかもしれません。もちろんそれらも主体性の一つの形ですが、日々の業務の中で実践できる主体性もたくさんあります。
その第一歩として有効なのが、「周りをよく見る」ことです。
指示されたタスクに集中することは大切ですが、視野を広げてチーム全体の状況や、他のメンバーがどのような状況にあるかに目を向けてみましょう。これにより、以下のようなメリットが得られます。
- チーム全体の状況把握: プロジェクトの進捗、ボトルネックになっている部分、予想されるリスクなどに気づきやすくなります。
- 貢献機会の発見: 誰かが困っている、特定の情報が不足している、といった状況に気づけば、自分がどのように力になれるかを考える機会が生まれます。
- メンバー間の連携強化: 周囲に関心を持つことで、自然とコミュニケーションが生まれやすくなり、チーム内の信頼関係や協力体制が強化されます。
- 自身の成長: チーム全体の視点を持つことで、自分の役割がどのようにチーム全体の目標に貢献しているのかを理解でき、新たな知識やスキルを学ぶ意欲にもつながります。
このように、「周りをよく見る」ことは、指示を待つのではなく、自分から積極的にチームに関わるための大切な土台となります。
「周りを見る」ための具体的な視点
では、具体的にどのような点に注意して周りを見れば良いのでしょうか。
- メンバーの様子:
- 特定のメンバーが長時間残業している、困った表情をしているといった様子はありませんか。
- いつもより会話が少ない、元気がないといった変化に気づくことも、状況を把握するきっかけになります。
- チームの進捗:
- タスク管理ツールなどで、チーム全体のタスクの進捗状況を確認していますか。
- 担当箇所は異なるものの、他のメンバーが進めているタスクが自分のタスクに影響することはないか、意識していますか。
- 情報共有の状況:
- チャットツールや共有フォルダで、何か見落とされている重要な情報はありませんか。
- 自分が持っている情報(調査結果、過去の資料、外部で得た知識など)が、他の誰かの役に立つ可能性はありませんか。
- 非公式なコミュニケーション:
- 休憩時間やちょっとした雑談の中で、業務に関する悩みや課題が話題に上がっていませんか。
- カジュアルな場で得られる情報が、実はチーム全体の課題解決につながるヒントになることもあります。
これらの視点を持つことで、これまで気づかなかったチームの状況や、自分が貢献できる機会が見えてくるはずです。
見つけた「気づき」をアクションに変えるステップ
「周りを見る」ことで何かに気づいたら、次はその気づきを主体的な行動につなげていきます。最初から大きな行動を取る必要はありません。まずは小さな一歩から始めてみましょう。
ステップ1: 小さな声かけから始める
最も簡単で効果的な一歩は、周りのメンバーに話しかけることです。
- 「何か困っていることはありますか」
- 「〇〇の件、順調ですか」
- 「何か手伝えることはありますか」
このように声をかけることで、相手の状況を直接聞くことができます。たとえ何も手伝えることがなかったとしても、気にかけているという姿勢を示すだけで、チーム内の心理的な安全性や信頼関係を高めることができます。
ステップ2: 手伝えること、協力できることを具体的に提案する
もし、相手の状況やチームの状況を見て「これなら自分にできるかもしれない」と感じることがあれば、具体的な協力を提案してみましょう。
- 「〇〇の調査でしたら、以前似たようなことをやったので、あの時の資料が役に立つかもしれません。共有しましょうか」
- 「その作業、もしよろしければ、この部分のデータ収集を私が行いましょうか」
- (ITエンジニアの場合)「そのバグ、以前別の箇所で似たような挙動を見たことがあります。もしかしたら〇〇が原因かもしれません。一緒に見てみましょうか」
漠然と「手伝いましょうか」と言うよりも、具体的にどのような協力ができるかを伝える方が、相手も依頼しやすくなります。
ステップ3: 得た情報を積極的に共有する
周りを見ていて、あるいは業務の中で自分が得た情報の中に、他のメンバーが知らないかもしれない、知っておくと役に立つかもしれない情報があることに気づくことがあります。
- 特定の技術に関する新しい情報
- 顧客からのフィードバック
- 会議で決まった内容の詳細(他のメンバーが参加していなかった場合)
- 自分が調査・解決したトラブルの知見
これらの情報を、チャットや日報、または簡単なドキュメントとしてチーム内で共有することを習慣にしましょう。情報が必要な人に必要なタイミングで届くようになります。
ステップ4: チームの非公式な課題に気づき、改善を提案する
周りをよく見ていると、特定のメンバーが繰り返し同じような作業で時間を取られている、あるいは情報共有の方法に非効率な点があるなど、チームとして改善の余地がある点に気づくことがあります。
すぐに大きな改善提案をするのではなく、まずはその気づきを信頼できる先輩やリーダーに相談してみるのも良いでしょう。あるいは、自分が担当できる範囲で小さな改善を試みることも主体的な行動です。
例: * 「〇〇に関する質問がよくチャットで流れているように見えます。もしかしたら、よくある質問とその回答を簡単にまとめたドキュメントがあると便利かもしれません」 * 「この作業、以前作ったスクリプトで自動化できるかもしれません。試してみても良いですか」
ステップ5: ポジティブな相互作用を促す
チームメンバーが良い成果を出したときや、誰かが協力してくれたときに、それに気づき、感謝や賞賛を伝えることも主体的な関わり方です。ポジティブなフィードバックは、チーム全体の士気を高め、協力しやすい雰囲気を作り出します。
小さな一歩から、着実に
「周りをよく見る」ことから始まるこれらの行動は、どれも決して特別なことではありません。日々の業務の中で少しだけ意識を変え、小さな行動を積み重ねることで実践できます。
最初は戸惑うことや、うまく行動に移せないこともあるかもしれません。それでも、まずは「見てみる」「気づいてみる」、そして「小さな声かけをしてみる」といった簡単なステップから試してみてください。
こうした主体的な関わりは、チームからの信頼を得ることにつながり、自身の成長にも大きく寄与します。指示を待つのではなく、チームの一員として自ら貢献することで、より深い仕事のやりがいや達成感を得られるようになるはずです。
今日から、ほんの少しだけ周りを見る意識を持って、チームへの主体的な一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。