「分かりました」で終わらない。指示の意図を理解して貢献するフォロワーシップ
社会人として、上司やチームメンバーからの指示に対して「分かりました」と返事し、言われた通りにタスクをこなすことは基本的なスキルです。しかし、それだけで終わってしまうと、任された仕事の全体像が見えにくくなったり、予期せぬ問題に直面した際にどう判断すれば良いか迷ったりすることが増えるかもしれません。
指示された内容をただ実行するだけでなく、その「意図」や「背景」を理解しようと努めることは、主体的なフォロワーシップを発揮する上で非常に重要です。なぜなら、意図を理解することで、単なる作業者ではなく、チームの目標達成に向けて自律的に考え、行動できるようになるからです。
この記事では、「分かりました」の次の一歩として、指示の意図を効果的に理解し、それを自身の主体的な貢献に繋げるための具体的な方法についてご紹介します。
なぜ指示の意図理解が主体性につながるのか
指示の意図を理解することには、いくつかの重要なメリットがあります。
- タスクの質が向上する: 意図が分かれば、表面的な完了だけでなく、求められる成果物の本質や、それが次にどう活かされるかを考慮して作業できます。結果として、より付加価値の高い成果につながりやすくなります。
- 状況変化への対応力が高まる: 予期せぬ問題が発生したり、状況が変化したりした場合でも、指示の根底にある目的を理解していれば、指示通りに進めることが難しくなったとしても、目的に沿った代替案を自分で考えたり、適切な人に相談したりする判断がしやすくなります。
- 新しい提案ができるようになる: 意図や背景を深く理解することで、現在の指示されている方法よりも、もっと効率的だったり、より良い結果をもたらしたりする方法に気づくことがあります。これにより、改善提案など、プラスアルファの貢献が可能になります。
- 自身の成長とやりがいにつながる: タスクの背景や全体像を理解することで、自分の仕事がチームや組織全体にどう貢献しているのかを実感しやすくなります。これは、仕事へのモチベーションや主体性を高めることにもつながります。
指示の意図を理解するための具体的なステップ
では、どのようにすれば指示の意図を効果的に理解できるようになるのでしょうか。ここでは、日々の業務で実践できる具体的なステップをご紹介します。
ステップ1: 指示の「目的」を確認する習慣を持つ
指示を受けた際に、「このタスクは何のために行うのでしょうか?」「最終的にどういった状態を目指していますか?」といった目的を確認する習慣を持ちましょう。目的が明確になることで、タスクの重要性や他のタスクとの関連性が理解しやすくなります。
ステップ2: 指示の「背景」や「前提」を尋ねてみる
可能であれば、そのタスクが生まれた背景や、なぜ今その対応が必要なのかといった点についても質問してみましょう。また、「〇〇という前提で進めて問題ないでしょうか?」のように、自分が理解している前提条件が合っているかを確認することも重要です。これにより、指示の裏にある状況や課題を把握できます。
ステップ3: 不明点をそのままにしない
指示内容に少しでも不明点や曖昧な部分がある場合は、必ず確認しましょう。曖昧なまま進めてしまうと、後戻りが発生したり、意図と異なる成果になってしまったりするリスクがあります。「この部分について、もう少し具体的に教えていただけますか?」「これは〇〇という理解で合っていますでしょうか?」のように、遠慮せずに質問することが大切です。
ステップ4: 自分の言葉で要約して確認する
指示の目的や背景、不明点を確認した後、自分が理解した内容を相手に伝えてみましょう。「つまり、〇〇という目的のために、△△という背景から、このタスクを◎◎という手順で行う、という理解で合っていますでしょうか?」のように、自分の言葉で要約して確認することで、誤解がないかを確認できます。これは相手に安心感を与える効果もあります。
ステップ5: タスクの「次」を意識する
任されたタスクが完了した後、次に何に繋がるのか、他の誰かの作業の前提となるのか、といった「次」を意識してみましょう。そして、必要であればその点も確認します。タスク単体だけでなく、チーム全体のワークフローの中での自分の役割を理解することで、完了報告の仕方や次の準備など、主体的な行動に繋がりやすくなります。
実践時のポイントと注意点
指示の意図を理解しようとする姿勢は大切ですが、いくつか実践上のポイントと注意点があります。
- 質問はタイミングと簡潔さを考慮する: 相手が忙しそうな時や、会議の途中など、タイミングが悪い場合は質問を一旦保留する、あるいは簡潔に要点をまとめて質問するなど配慮が必要です。事前に自分で調べられることは調べておくことも重要です。
- 「全部聞かないと動けない」にならない: 意図理解は重要ですが、全てが明確になるまで動けない、という状態は避ける必要があります。自分で判断できる範囲は判断しつつ、特に重要なポイントや不明瞭な部分について確認するというバランスが大切です。上司やリーダーと、どこまで自分で判断して良いか、どこから確認が必要か、といった期待値をすり合わせることも有効です。
- 意図理解の結果、提案に繋げる場合: 意図を理解した結果、「もっと良い方法があるのでは」と思った場合は、なぜその方法が良いと思うのか、意図にどう貢献できるのかを論理的に説明できるよう準備してから提案しましょう。
まとめ
指示に対して「分かりました」と返事することは始まりであり、終わりではありません。その言葉の次に、指示の「意図」や「背景」を理解しようと努めることこそが、主体的なフォロワーシップの第一歩となります。
目的や背景を理解することで、タスクの質を高め、予期せぬ状況にも柔軟に対応できるようになり、そして何よりも、自分の仕事がチームや組織にどう貢献しているのかを実感できるようになります。これは、あなた自身の成長とやりがいにも直結することでしょう。
今回ご紹介したステップは、特別なことではありません。日々のコミュニケーションの中で、少し意識を変えるだけで実践できることばかりです。今日からでも、一つでも良いので意識して取り組んでみてください。指示の意図を理解しようとするあなたの主体的な姿勢は、必ずチームへの信頼と貢献へと繋がっていくはずです。